洋々閣のお風呂について

残念なことに、洋々閣の庭からは、掘っても温泉は出そうにありません。
いろいろ悩んだ末に、12年ほど前から、麦飯石のお風呂にしました。
最初は半信半疑で、業者さんのアドバイスに乗って見ました。
工事が済んで最初のお風呂にためしに浸かってみて、びっくりしました。
お湯がとてもやわらかいのです。
おまけに芯まで温まります。

化学薬品のお湯とちがって、自然のものですから、全く安全です。
お客様にも喜んでいただいて助かっています。
温泉でしょう、と云われます。

さて、うっかり女将は、やっとこの頃になって、
麦飯石がブームになっていることを知りました。
あわてて勉強してみると、
麦飯石ってすごいのね、とわかりました。

そこで、うけうりです。

麦飯石は地質学でいえば、六千万年ほど前にできた石英斑岩です。
中国では薬石として、「本草綱目」にも記載されているそうです。
わが国でも早くから知られていて、浴槽やリハビリテーションに使用され、
近年は科学的に実証されて、飲料水や化粧品に応用されるようになりました。

お風呂に使うと、
ミネラルを溶出する(温泉効果)
酸素を水中に出す(代謝を促す)
水質を調整する(水中の汚染物質やいやな匂いを取る)

など、
いいことずくめ!

欠点は高価なこと。
でも、宿屋ですから、しかたがない。
温泉掘るより安いですもの。

お客様が温泉でもない風呂に、二度も三度も入られるのって、
やっぱりうれしいことですね。

さあ、お風呂が沸きましたよ。ごゆっくり、どうぞ
 

  麦飯石の湯


*客室内の風呂は
麦飯石の湯ではありません。
普通の水道水です。




こうや槙の湯桶
 
佐藤隆介著『鬼平先生流 旅の拘り、男の心得』より
              講談社 2000年2月26日 発行
 子供の頃から風呂は長湯で、一度入ったらまず一時間は出て来ない。 ことに温泉ではそうなる。 長いつき合いでいまや親戚同然になっている唐津の旅館「洋々閣」などは、私が風呂へ入ったと知ると女将がこっそり様子を確かめに来る。 ここは温泉ではないが麦飯石とかいうものの効用で湯の肌ざわりよろしく、明るくて清潔な大風呂は温泉なみの気分だから、ついつい長風呂になる。 あまり長いので女将が心配して見に来るのである。
 一時間も風呂で何をしているのかといえば、何をしているのでもない。 ただぼんやりしている。 身体が冷えてきたら湯槽(ゆぶね)に入る。 温まったら上がって、窓から外を見ている。 窓が開けられる場合は全部開け放ってしまい、ほてった身体に風を浴びている。 これは真冬でもそうだ。 それだけのことが何ともいえず心地よい。
  



佐藤隆介
1936年東京生まれ。 東京大学卒業後、広告代理店のコピ-ライターを経て、故池波正太郎の書生をつとめる。 現在、亡師ゆずりの粋と洗練を伝える数少ない文筆家として、広告や雑誌で活躍。 食と酒、焼き物に造詣が深い。 編著に「梅安料理ごよみ」(講談社文庫)、
著書に「うまいもの職人帖」(文芸春秋)、「鬼平先生流 男の作法、大人の嗜み」(講談社)等がある。
 

*女将が男湯をのぞくのは、特別限定サービスです。(無料)
対象は、一人でお風呂に入られる80歳以上のかた、または5歳以下のかた。
および、制止を振り切って千鳥足で入られる酔っ払い様。入られて15分以上物音がしないと、のぞきます。