#203

平成29年2月


大槻文蔵師
能シテ方観世流能楽師
人間国宝

このページは女将が毎月更新して
唐津のお土産話やとりとめもない
おしゃべりをさせていただくページです。
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〈大槻 文蔵(おおつき・ぶんぞう)〉 幼少から父・大槻秀夫や祖父・大槻十三らに師事。研究者と協力して、廃絶した作品をよみがえらせ、再演することに意欲的に取り組み、能楽界を活性化させてきた。07年には、老女物の秘曲の中でも最高位とされる「関寺小町」を演じた。(人間国宝に認定を受けたときの朝日新聞記事より)



 皆様、今月は、ちょっと自慢みたいになりますが、とても嬉しかったので喜びのおすそわけで書かせていただきます。お許しください。

 お能の大槻文蔵先生は、毎年唐津くんちには洋々閣に来てくださいますが、昨年のくんちでは先生の人間国宝認定のお祝いで盛り上がりました。その後12月13日にお祝いの会が大阪で開かれまして、私ども夫婦も末席に連ならせていただいたのです。祝賀会の発起人からして、わたくしごときがお名前を申しあげるのもはばかられるような錚々たるメンバーで、政財界、伝統芸能の関係者、うちに人間国宝も何人もいらっしゃる、という具合。500人ほどの招待客とお見受けしました。私は、まさかオペラグラスを持ってきて来客の顔ぶれをのぞくという失礼をするわけにもいかず、遠くから、「あ、歌舞伎の○○丈、あ、文楽の□□大夫」と興奮してワクワクドキドキ。
前に立って行って写真を撮る度胸はないので、残念ながら写真がすくないのです。
 
 受付横で人間国宝の認定書を拝見する。

 まず、発起人代表の挨拶や各界の祝辞があって、祝舞としては、最近大槻先生の「芸養子」になられた大槻祐一さんの『石橋』がありました。若き獅子は喜びに舞い狂い、高く高く跳躍しました。ああ、若さって美しい、と思った獅子でした。残念ながら、アナウンスで写真は撮らないでくれとのことでした。

 次の祝舞は京舞の人間国宝・井上八千代先生で、めったに披露されることのない、あめのうずめのみことの舞を舞われました。こちらの写真も撮れませんでした。

 関西の各地の醸造元からの四斗樽が舞台上にずらりと並び、これまたすばらしいメンバーが呼び込まれて鏡は開かれ、元NHKアナウンサーで古典芸能の番組を長くやっておられた方の名司会のもとに、会は3時間瞬く間に過ぎました。
 
 関西の蔵元からの祝いの四斗樽がならび、それぞれに名士が5人ずつついて鏡が開かれた。

 せっかくの御馳走も興奮していたのであとで持ち帰ったメニューを見て、「こんなの、食べたっけ」といぶかるほどに、くいしん坊の私が食い気を忘れていました。洋食のフルコースで関西の産地のものばかりだったことだけ記憶にあります。若狭の鯛、とか、但馬の牛とか。私たちのテーブルはシテ方がお二人と鼓のかた、あとはお能のお弟子さんたちで10名ほど。主人の隣の方が100のお能のあらすじを漫画で描いた本を出された渡辺睦子さんで、その御本は私も持っていましたので、話がはずみました。

 大槻先生も頬を紅潮させて少年のような笑顔でいらっしゃいました。
主賓のお一人の梅若玄祥先生には、前に洋々閣にお越しいただいたことがあり、久しぶりにご挨拶をいたしましたら覚えていて下さって、私の帯を褒めてくださいました。
 
 この帯は背中に3つの能面、前に鼓と笛という賑やかな帯です。100年近く経ってると思います。これは主人の母が娘時代に締めたものです。観世をお習いしていて舞台にも立ったことのある義母の形見です。柄が柄だけに、めったに締めるチャンスはなかったのですが、70年前にまだ40代の若さで逝った母をこの会に連れて行きたかったので思い切って着てみました。
 鼓のお家元、大倉源次郎先生にも久しぶりにお会いしましたが、帯の鼓を指さして喜んでくださいました。
生存中に嫁として会えなかった姑に初めて親孝行した気分です。
 
 恥ずかしかったので隅っこの暗がりで帯の写真を撮って貰いました。


 3時間のパーティが終わってもみなさんお帰りにならず大槻先生を囲んで写真撮影でしたので、私どももおそるおそる後ろで見てましたら呼んで下さって、記念撮影ができました。
 
 御夫妻と記念撮影

 自慢話につきあってくださってありがとうございました。
次の写真は昨年の11月4日、唐津くんちの席でくつろがれる大槻先生です。酔っても常に端正で美しい75歳でいらっしゃいます。私どもも美しく老いることに努めたいものでございます。
 
 2016.11.4 唐津くんち 洋々閣大広間にて

 では今月はこれにてお別れいたします。

  
恋は山 涙は海と なるものを また いつの世を まつらがた
『松浦佐用姫』より
この曲は大槻文蔵先生が復曲されたもので、写真は大槻能楽堂より出ている絵はがきです。)
 
 今月もこのページを訪れてくださってありがとうございました。またお会いしましょう。

                             洋々閣 女将    大河内はるみ

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